INORI広場 Blog

夜桜と怨念


家の近くに大きな公園があります。
土日は地域の野球やサッカーチームが練習できる大きなグラウンドもあり、子どもたちが遊べる遊具機器なども設置されていてちょっとした散歩にはもってこいの場所なのです。

20年くらい前にはグラウンドの周りは高台の傾斜があり、芝生がいい感じで生えていて、その上を段ボールを使って下まで滑り降りる遊びを皆が楽しんだものです。



そのころは僕の子供も小さかったので、その「段ボール滑り」は本当に親子ともに楽しめたものです。
ところが、ある時期からそれが「危険だ」ということから芝生には立ち入り禁止となりいつのまにか柵が作られてしまったのです。
残念なことです。

 夜 の 桜 


そんな公園の周りには桜の木がたくさん植えられていて、春になると見事な桜景色が楽しめます。
僕はある時期から、その桜の木の近くにある鉄棒で懸垂をして腕力を鍛えていました。
大人がジャンプしないと届かない位の高さの鉄棒って、子どもの遊具場所にはそんなにあるわけではないのでとても便利でした。
たまにする懸垂ではあるけれど、それでも地道に続けていれば意外と懸垂の回数も伸びてやる気になってくるものです。

そんな適度な懸垂運動を2年くらい続けていたでしょうか。
(冬は寒いのでやりませんでしたが)(#^.^#)

公園は仕事を終えての帰り道にその場所を通るので、懸垂時間はいつも夜の10時頃でした。
周りには街灯があるのですが、歩くのには困らないという程度の薄暗い雰囲気です。
桜が満開の頃は、夜桜は確かに綺麗なのです。
数人で酒でも飲みながら眺めているのなら、とても静かに語らいあえる良い雰囲気だろうなと思います。

しかしそんな綺麗な夜桜も、一人でいると少し心持ちは変わります。



広い公園にいるのは自分ただ一人。
ほのかに照らされた街灯の光が満開の桜を妙に妖艶に照らし出し、それが少し怖さを感じるのです。

こんな時、ずっと以前に聞いた怪談話を思い出します。

長い話ですが内容を一言で言うと

一人の女が、騙され裏切られた末に桜の木の枝で首をくくって自殺をします。
桜の花が咲く頃、夜にその下を通る男がいれば姿を現し、男の生気を吸い取り呪い殺されてしまう、という話です。



夜の桜の下では今にも恨みを抱えた女が現れそうで気味が悪くありますが、懸垂の時間はほんの数分ですから、さっ、とやって帰っていました。

そんなある日、いつものように夜桜の木の横で懸垂を終えた時です。
ふと何本も並んでいる桜の木を見ると、ある1本の木の中央部分に黒い何かが見えました。

何だろう
そう思って近づいてゆきました。

それは鎌(かま)だったのです。
鎌が桜の木にぐっさりと刺されてありました。それもしっかりと・・・



な、なんでこんなところに・・・!?
動揺した僕はこの状況の意味を考えるのにしばらく時間がかかりました。

その場所は背の高い雑草が生える場所なので、年に2回は市が委託する刈り取り業者が刈り取り作業をしています。
一瞬、その業者が忘れて行った鎌なのかと思いました。
しかし草木を刈り取る時期でもありませんし、そもそも作業に鎌なぞ使いません。
草刈り機でバッサリです。
鎌を使うことがあったとしても、桜の木に鎌を刺すなんて罰当たりな行為は絶対にするはずはないでしょう。

じゃ・・・呪い・・・?

僕はおそるおそる周りを調べることにしました。
ここで藁人形でも見つかったらかなりやばい状況です・・・(-_-;)
しかし幸いにそのようなものはありませんでした。

とにかく今夜は、この場所から早く離れようと思いましたが・・・
桜の木に突き刺さった鎌がどうも気になります。
桜が痛がってはいないだろうか・・・
何となくそんなことを思ったものですから、刺さっている鎌を力強く抜いたのです。
鎌はそのあたりに放りなげました。

その後、しばらくその場所で懸垂するのはお休みにして、3日目の夜に見に行ったのです。

すると鎌はありませんでした。

たぶん誰かの忘れものだったんだろうな。
と、そう結論付けてあまり余計なことを考えるのはやめるようにしました。
そしていつものように懸垂をしようと鉄棒に飛びついたところ・・・

ギクッ!・・・
右腕に激痛です・・・
えっ!なんで?

思い当たることと言えば、懸垂の回数が伸びて記録を更新していたのですが、頭打ちになってこれ以上は無理かも、という状態だったのです。肩に負担がかかっていたのかもしれません。

そう思うことにします。
いや、そうなのです。たぶん・・・

それから少しずつ痛みはやわらいできたけれど、懸垂が出来るほどまでにはならなくて、完治するのに1年かかりました。
その間、桜の木の横は通っても鉄棒を握ることはしませんでした。

しかし今思い出しても、あの鎌は一体何だったのでしょうか・・・

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