先日、島根へ帰省した時の事です。
いつもの様に高速バスに乗り、米子駅までのんびりと車中で読書をしていました。
そしていつもの様に、途中のパーキングでバスはトイレ休憩のために停車しました。
コーヒーを買いに行き、車内に戻り・・そう、慣れた旅でした。
しかしいつもと違ったのはこの次です。
バスが発車する寸前に、中央あたりの席に座っていた男性が走って来て運転手に言います。
「貴重品が無くなりました❗️調べて下さい❗️」
男性の顔は引きつっています。
それから運転手は男性の席のあたりで何やら話が始まりました。
どうやら今の休憩時間の間に、誰かが男性の貴重品を盗んだようなのです。
もちろん、男性はあえて「無くなっていた」と柔らかな言い方をしています。
その時の僕は、事態を軽く考えていました。
事の真相はわからないけど、すぐに解決するだろう、と。
ですから、売店で買ってきたコーヒー片手にクリームパンをほおばっていました。(朝だったもので😅)
高速バスは何度も利用しているけれど、この様なトラブルは初めてです。
しかし、事件というのは「初めて」起こるものなのですね…
運転手との話はいつまでも続いています。
あれ?何だか深刻そうだ…
男性が車内の乗客に叫びのような声で伝えます。
「お願いです。大切なモノなんです❗️返してもらえませんか❗️お願いです❗️」
車内はしーんと静まり返ったままです。
大切なモノ?そう言う言い方をするからには、サイフなどの現金ではなさそうです。
運転手は外に出て本部と連絡を取り始めました。しかしそれが終わっても、何もしようとはしません。
普通、マイクを通して周りを探してもらうようお願いするとか、間違って(間違うわけないのだけど…)男性の貴重品がカバンに入ってないか点検してもらうなど放送しそうなものだけどそれもありません。
次に男性は、一人一人に「あなたは休憩に外に出ましたか?」と聞いて回っています。もちろん僕も聞かれました。
この辺りから男性の「本気度」が伝わってきました…絶対見つけてやる、という…
僕は車内の乗客を確認します。
一番前の席だったので皆の顔はよくわかりました。
初老のご夫婦が2組、中年のご夫婦が3組、初老の女性2人組、40代の女性2人組、中年男性が3人、若い女性2人、その他もろもろ・・だったでしょうか…
顔ぶれを見る限り、皆さん真面目で優しそうな方ばかりです。
ヤバイ❗️と思いました。
僕は頭にバンダナをして腕にはブレス、首から大玉のネックレス…明らかに「ちょっと変わった奴」と写っているはずです。
そう、まず犯人候補です💦
「インターの休憩で外に出た」ので、疑惑は少し薄まった感はありますが・・・
休憩時間に外に出ていない人がいたのかどうかはわかりません。とにかく男性は諦めませんでした。
この状況で車内は静かです。誰も何かをしようとはしません。
こんな時、僕はどうも仕切ってしまうキャラなのですね・・・だって誰も何もしないのですから。
男性に近寄って行って聞きました。
僕「あのぉ…無くなったものはどのようなモノなのですか?」
男性「四角いフサのついた御守りです」
僕「色は?」
男性「水色です」
僕「座席の上に置かれていたのですね」
男性「いえ、カバンの中に入れていました」
僕「じゃ、誰かが中を開けないと取り出せないわけですか…」
男性「そうです」
だいたい、この質疑って運転手の仕事じゃない?なんで僕が探偵みたいにやってるんだ?
て思いましたが、あえて皆さんに聞いてもらう事で、犯人に自白してもらえれば、とも思ったのです。
例えば、「あれー?なんか変なモノが足元に落ちてるぞー。拾ってみよう。フサが付いてるー」みたいなクサイ演技で自白することも出来ます。
もちろん米子駅までは、皆の冷たい視線に耐えねばなりませんが。
無くなったモノについて、最後に見たのはいつか、とか色々聞きながら、何だかコレもヤバくない?て感じ始めたのです。
だいたい、ドラマでも犯人はやたら喋る奴って多いですよね。刑事と一緒になって協力してるふうだったが、実は犯人だった、みたいな…😅
ラチがあかず、男性はとうとう全員の荷物検査をし始めました。
もちろん、この時誰かが文句を言いだしてもおかしくはありません。
しかし、皆さん良い人だったのでしょう、全員がそれに応じました。もちろん、男性はかなりの低姿勢でお願いしています。
腰は低いのだけれども、必ず見つける、という執念…
余程大切なモノのようです。
一人一人、カバンの中身を見せています。
男性には申し訳ないのですが、正直僕は成り行きに興味がありました。
この後どういった展開になるのだろうか・・・
本当に犯人がこの中にいるのだろうか・・・と。
残念ながら「大切なもの」は出てきませんでした。
ただ身体検査までしたわけではないですから、本気で隠そうとすればそれは可能なわけです。
男性はさすがにそれ以上追及することはありませんでした。
もちろん何としても見つける気なら、警察に連絡して、米子駅で警官が身体検査などすべてすれば何か出てくるかもしれません。
しかし男性は皆に低調にお詫びをして終わりにすることを選んだようです。
この間バスは動かずにずっと止まったままです。30分は停車していたのではないでしょうか。
バスを降りてからの乗り換えの時間だってあります。
そのあたりの迷惑を考えたのでしょう。
到着まで2時間ほどありましたから、その間も男性は自分の持ち物のあるとあらゆる場所を探しまくったと思います。
でも出てこなかったということは、男性の勘違い・・つまり、盗られたのではなくどこか別の場所にしまっていた、など・・ではないのでしょう。
実際バスが米子駅に着き、全員が降り終わった後JR駅で時刻表を確認していると、その男性が携帯で誰かと話しをしているのが分かりました。
ちらりと聞こえた会話では「‥参ったよ・・財布より大切なものなのに・・・」と言っています。
気の毒に・・・
さて、あれから思うのです。
犯人はいたのでしょうか?
現金が盗られたのならまだしも、男性にしか価値のないものをわざわざ大きなリスクを背負って盗ろうと思うでしょうか。
そこで僕が出した結論は・・・
消えたのです。
御守りが。
天然石をこよなく愛する方なら経験がおありだと思うのですが、石は消えることがあります。
不思議なのですが、あるのです。
このような話を一般の方にするとたいていは鼻で笑われます。
その対応をされるのをよく知っているので、経験者はそのような話は分かる人にしかしません。
店に来られるお客様からも消える話はよく聞きます。
なぜ消えるのか・・・ですが、それは石に聞くしかありません。
一般に考えられるのは、持ち主に危険が迫っていたり精神的負担があり、それを一生懸命軽減した。つまり十分な仕事をしたのでお役目ご免となったから、というものです。
ブレスやネックレスだと、中に通っているひもやゴムの劣化で切れて落ちたということが考えられますが、今回の場合は当てはまらないでしょう。
ただ、このことを男性に言えるでしょうか・・それもバスの車内で・・・
想像しただけでも自分の立場が恐ろしくなります・・・
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