出雲は私の郷里が島根県の松江市ということもあり、僕の好きな場所です。
今年の夏も参拝に行ってきました。
出雲大社付近は伊勢神宮と違い、若い人が参拝後に楽しめるお店通りの充実度が今一つ足らないのですね。それが惜しいところです。
さて、先日そんな話題をお客様と話していると、その方が面白い体験話をしてくれました。
その男性のお名前をJさんとします。
もちろん霊体質満載の方です。
Jさん「店長、出雲ではどの宿に泊まられましたか?」
私「いや、田舎の実家から行けるので出雲では泊まっていませんけど」
Jさん「そうですか。でも、もし泊まる機会があれば〇〇旅館に泊まってみて下さい。」
私「何かあるのですか?その旅館には。」
Jさん「ええ・・・以前とっても不思議な事がありまして・・・」
Jさんの不思議話は霊体験であっても怖さや恐ろしさはなく、とても面白く聞けるものなので今回もわくわくしながら聞きはじめていました。
・・・・・・・・・・・・
Jさんの語りから
その時僕は仕事で出雲まで来ることになったので、せっかくだからついでに出雲大社にお参りすることにしたのです。
泊まるところは前もって決めていました。
綺麗な有名ホテルではなく、昔ながらの情緒ある旅館で雰囲気を楽しみたいと思ったのです。
旅館に着くと、それは旅館というよりホテルといってもおかしくはないほど大きくて立派な建物だったのです。
旧館と新館があり、僕としては値段も安い旧館に泊まりたかったのですが、予約の時にはすでに埋まっていました。
ですから、新館に泊まることにしたのです。
温泉に浸かって、おいしい料理もいただいた後、今日の仕事のまとめだけでもしておこうとパソコンに向かい始めました。
自分で言うのも何ですが、僕は仕事モードに入ると結構集中するほうなのです。
ところがその時は、一気に睡魔に襲われて・・・・
いつの間にか意識がなくなっていたのです。
どれくらい眠ったのでしょうか・・
あたりが騒がしくて目が覚めました。
どうやら隣の部屋が騒がしいのです。
たくさんの人の笑い声や話し声。廊下では何人もの女中さんの忙しく走り回る足音がパタパタと聞こえます・・・宴会かパーティ?
一体隣の部屋は何なのだろう・・・と興味が沸いたので、話し声を聞いてやろうとしたのです。
ぴったりと壁に耳を当てて盗み聞きをするつもりでいました。
すると・・・
突然壁が消えたのです!
僕の体はバランスを失って隣の部屋に転がるように倒れてしまいました。
「えっ?えっ?・・・な・・・なに!?なんで?」
驚きはもちろんですが、何が起こったのかわからずただただ茫然とするばかりです。
そして周りを見ると・・・
部屋は広い宴会場で、そこには大勢の人が歓談しているではないですか。
外国人もたくさんいて、衣装がまたおもしろいのです。
ルネサンス風の洋服の人もいたり、着物の方もいます。
皆楽しそうです。
料理もたくさん並べられていて、今でいう立食パーティの雰囲気です。
宴会場だからパーティが行われているのは理解できました。
でもこんな時間に?
それよりなんで自分がここにいるのだろう・・・まず、壁が消えたよな・・・いや、馬鹿な。そんなことがあるはずはない。
多分寝ぼけてしまってふらふらとここに来たに違いない。
とにかくここを出なければ!!
明らかに場違いな場所にいる僕は、逃げるようにその部屋から出たのです。
自分の部屋は、やっぱり・・・というのは変なのですが、ちゃんと廊下を出た隣にありました。
わけがわからず、とりあえずそのまま寝て朝になりました。
朝になって昨晩のことを思いだした僕は、明るい中で昨日の宴会場をもう一度覗いてみようと思ったのですが・・・
ありません・・・
というか、廊下は僕の部屋が突き当りで、隣へ行くにもなにもすでにそこはすべて壁なのです。
「そんなばかな・・・」
いや、きっと自分は夢でも見たのに違いないと自分に納得させて、朝食を取りに食堂へ行きました。
チェックアウトの時、玄関先にちょうど年配の女将さんがいらっしゃったので、気になっていたことを聞いてみることにしました。
Jさん「あの・・私、昨日〇階の〇〇号室に泊まっていた者なのですが」
女将「この度は誠にありがとうございました。お泊りはご満足いただけましたでしょうか」
にこにこした上品な笑顔でそのように応えてくれます。
Jさん「はい。とっても気に入りました。・・・ところで・・・つかぬことをお伺いしますが、僕のいた部屋の隣には宴会場のようなものがありませんでしたか?」
その言葉を聞いた女将はすぐに真顔になりました。
女将「宴会場のことをどこでお知りになられましたか?」
Jさん「あ、いや・・・なんと言うか・・・信じてもらえないと思いますが、突然その部屋に入り込んでしまったのですよ・・」
女将「入り込んでしまった?」
Jさん「ええ・・壁が消えて・・・」
女将「・・・・・・・」
Jさん「あ、いえ、いいんです。気にしないでください。」
くだらないことを話すべきではなかったと思い、その場から立ち去ろうとしました。
すると・・・
女将「あの、よろしければ詳しくお話を聞かせていただけませんでしょうか」
私は別室へ案内されて、それから昨日起こった事を話しました。
するとおかみさんから意外な話が出てきたのです。
女将「そのようなことがあったのですね・・・」
女将さんは、嬉しいような寂しいような何ともいえない表情で語り始めます。
女将「この宿は父の代から始めたものです。当時はとっても賑やかでした。
人と話をするのが好きな人でしたから、お金のない学生さんたちにタダ同然で止まらせてあげたことはしょっちゅうだったようです。
その上、お酒を持って行って一緒に飲んだりしていたそうですよ。
当時の私は小さくて、仲居さんによく遊んでもらったものです。調理場に行ってはよくつまみ食いをして怒られました。」
そういって笑っておられます。
女将「そんな父でしたから、よく宴会場にはお客様が来られて楽しい会が催されていたと思います。
父が亡くなり私の代なってから、あの宴会場は使うことはありませんでした。そして老朽化の問題もあり、ずっと以前に一部を建て替えたのです。お客様が止まられたのはその新館の方ですね」
Jさん「で、その宴会場は今ではどうなっているのですか?」
女将「そのままにして残してありますよ。お客様がお泊りになられた隣です。でも変ですね・・・そこへ行く廊下は壁でふさいでいますので奥からでないと出入り出来ないはずなのです。」
Jさん「あの・・・よければその場所、見せていただけませんか」
女将「・・・・はい、いいですよ。ではどうぞこちらへ」
と言って、その場所へ案内してくれました。
そこは僕が止まっていた部屋の方向ですが、庭からぐるりと回って別の廊下から行かないとならないのです。
部屋の入り口には大きな鍵がかかっていました。
まるで時代劇に出てくる、蔵の鍵そのものです。
太くて長い鉄の「かぎ!」て感じのやつです。
戸を開けると入り口には大きなカーテンがかかっていて、それをくぐると・・・昨日見た部屋そのままでした。
長い間使っていない感じで、少し湿気と板の間のにおいがします。
昔の木造りの校舎の香りとでも言いましょうか・・・。
女将さんはわざわざ旅館の出口まで送って下さいました。
女将「久しぶりに当時の様子を思い出しました。父も喜ぶと思います。」
そういって深くお辞儀をされる女将と別れて、僕は出雲大社へと進んでゆきました。
これがJさんから聞いたお話の全てです。
僕が面白いと思ったのは宴会場での場面です。
この旅館が何かの事故で、そこに居た大勢の方が不幸にして亡くなったという設定なら、霊と遭遇したパターンでよくある話です。
しかしJさんの体験したケースは明らかに次元移動です。
壁を通り抜けたら違う世界だったわけですから。
ただ、もう一つわからないことがあります。
宴会場に外国人がいたとしても不思議はないのですが、当時の服装といえば襟の広いジャケットスーツでしょう。ルネサンスって、下のような服装ですよ?
16世紀頃の服装って・・・当時でもコスプレパーティがあったのでしょうか?
たぶん、この場所に関係する様々な時代の一部が入り乱れたのだと思います。
しかしJさんはあの時、「居心地が悪い」と感じて宴会場を飛び出したわけですが、そのままあの場に居たらどうなっていたのでしょうか?
パーティで大勢の着飾った人々の中、一人ジャージ姿のJさんが周りの人と歓談している・・・
すごく場違いだけど笑えます。
インスタにあげると「いいね」が200くらい付きそうです(笑)
Jさんがその時代で生活し続ける、という選択もあってほしかったな・・・と他人ごとで思ってしまいます。
それはさておき、実際にこういう事ってあるんですね。
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